リーガルボイスー11 遺言書に関する、知っておきたい3つのこと

遺言書に関する、知っておきたい3つのこと

 今回のタイトルは、生前に、

①遺言書を作成すべきか否か

②遺言書はどの方式にすべきか

③遺言書の作成は誰に依頼すべきか

 という3つの命題が含まれています。結論は、

①遺言書は作成すべき

②遺言書は公正証書にすべき

③遺言書の作成は弁護士に依頼すべき(弁護士を遺言執行者として指定すべき)

 となります。その理由について順に説明します。

なぜ遺言書を作成すべきか

 まずは、遺言書がないとどうなるかを中心にお話を進めていきます。
 遺言書を作成するのは、財産を遺して亡くなったときに相続人等が揉めないため、という漠然としたイメージを持たれている方が多いと思います。では相続の際、人はなぜ揉めるのでしょうか。「遺産は普通に法定相続分で分ければ良いではないか」という意見が聞こえてきますが…。

 しかし現実は、「預金のみを〇等分にして、法定に従っていれば良い」というシンプルな相続は少数派です。

 被相続人(※1)名義の土地建物があり相続人(※2)の一部が同居していた場合、被相続人が生前に会社を経営し相続人の一人が後継者として株式を引き継ぐ必要がある場合、被相続人が生前に一部の相続人に多額の援助をしていた場合等々、すんなりいかないケースは少なくありません。すなわち被相続人と相続人との関わりは千差万別で、その評価も評価する人によって分かれるからです。
※1=相続財産を遺して亡くなった人
※2=相続を受け継ぐ立場にある人

 また相続では、相続人の調査が必要となります。相続人の調査は戸籍等を取り寄せることにより行いますが、その調査も容易ではありません。単に被相続人と相続人の親子関係や兄弟姉妹関係を明らかにするだけでなく、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取り寄せる必要があり、場合によっては被相続人の両親の戸籍をさかのぼる場合もあります。特に被相続人やその両親が戦時中や戦前生まれですと、家督相続の制度の時代で、戸籍の構成員も多く(20人以上の戸籍のあり)、また住民票の制度がなく、引っ越しごとに戸籍を変更する必要がありますから、取り寄せる戸籍の数も自ずと膨大になります。

 こうしたことを考えますと、遺言書を作成しておくことがベストです。

なぜ公正証書か

 自筆証書遺言は、手書きである必要があります。昨今では少しでも負担を減らすため、財産目録はパソコンで作ったものでも可能となるよう改正案が国会で審議中ですが、遺言書の条項は手書きでなければなりません。

 一方、公正証書遺言は、遺言書の文案を公証人が作成するため、誤記等が生じることはありません。また自筆証書遺言は遺言の検認が必要なので、法定相続人の調査が必要となり、相続人や受遺者(※3)の手続的な負担が生じますが、公正証書遺言であれば遺言の検認および法定相続人の調査は不要です。
※3=遺言により財産を受け取る人

 公正証書の利点はこんなところにあります。

なぜ弁護士か

 最後に弁護士に依頼する利点を紹介します。
 遺言執行者(※4)は未成年者でなければ誰でもなれます。ではなぜ弁護士が遺言執行者に指定されることが多いのでしょうか。それは、弁護士は法的紛争の専門家だからです。
※4=遺言を執行する権限を持っている人

 弁護士が遺言執行者に就任すること自体、一部の相続人等からの不当な要求等による不毛な法的紛争を抑止する効果は絶大です。

 私の経験では、遺言執行者が弁護士でなく、かつ遺言の作成に関わっていないため、相続の際の手続きが繁雑で、相続人から相談を受けたことがあります。その案件では、結局、財産調査は相続人に丸投げされたため、私と相続人が苦慮しながら多くの時間を費やし、解決したことがあります。

 やはり相続は専門家である弁護士に依頼したほうがよいと思います。