リーガルボイス-8知っておきたい債務整理の基礎知識

知っておきたい債務整理の基礎知識

破産したらどうなる?

 借金の返済ができなくなる原因は、仕事がうまくいかない、自分や家族の病気などで仕事ができなくなった、友人の借金の保証人になったら債権者から請求が来た…など様々です。
今回は、借金問題についての解決方法全般を説明するのではなく、借金問題に関してありがちな誤解について説明したいと思います。
 破産をすると戸籍謄本に載るというのは誤りです。破産をしても戸籍謄本には載りません。戸籍謄本に載るのは離婚した場合です。もちろん住民票にも載りませんし、選挙権がなくなるわけでもありません。自己破産した場合に載るのは、官報です。政府が出している冊子です。一般の人は見たことはないと思いますが…。
自己破産を含む借金問題を解決することを債務整理といいます。このほか、借金の支払義務が残ることを前提とする個人再生や任意整理というのがあります。また債務整理全般に当てはまることですが、信用情報(いわゆるブラックリスト)に登録されると、5~10年の間、金融機関等で借入れができなくなります。

弁護士に頼んだ翌日から借金が消える?

 「弁護士に頼んだら借金が消える」というのは大きな誤解です。自己破産にしても、裁判所から免責の許可を受けて、はじめて借金の支払義務はなくなります。
ただし、弁護士に破産手続を依頼して、弁護士が金融機関等の債権者に受任通知(債務整理の依頼を受けた旨の連絡)を送付すると、本人への直接の請求は法律上禁止されているため、督促状や電話はパタりと止まります。まずはホッとしますが、これで解決したわけではありません。

過払金が出ても解決したわけではない

 ネガティブなことを話すのは好きでないのですが、嫌なことをごまかすのは私の性分に合わないので、あえて話します。
債務整理によって解決できるのは、過去の借金に限られます。また借金の返済を除いた状態で、収入よりも支出が大きい方は、債務整理のみで万事解決ということにはなりません。支出を抑えたり、収入を増やすためにバイトの掛け持ちをしたり、場合によっては生活保護の受給を申請したりする必要が生じるかもしれません。
 過払金が出る場合も同様です。過払金が出るからといって、必ずしも債務整理としての事件処理が終わったわけではありません。例えば、次のような依頼を受ける弁護士はいません。
 自己破産やむなしの状況であるにもかかわらず、過払金のみを回収し、過払金の出ない金融機関との交渉は放置する、あるいは形だけの任意整理(到底払えない返済額での和解)をする、いわゆる「過払いのつまみ食い」です。
その結果、再び返済が滞り、またもや弁護士が自己破産の相談を受けるということになれば、債務者の経済生活の再生という趣旨に合致しませんから、何のための債務整理か分かりません。そもそも、そのような事件処理は債務整理と呼ばれる資格すらありません。
 室町時代のころの徳政令(朝廷・幕府などが債権者・金融業者に対して債権放棄を命じた法令)や某テレビゲームの徳政令カードのように、借金が簡単にチャラになるという話は、現実の生活ではありません。債務整理はそう甘くないのです。借金で悩んでいるときは、信頼できる弁護士に相談することです。