リーガルボイス-14 賃貸借契約を結ぶとき

賃貸借契約を結ぶとき

賃貸借とは

 多くの人が馴染みのある法律に、アパート等の賃貸借契約があります。

 賃貸借とは、法律的にいうと、賃貸人(貸主)がある物の使用・収益を賃借人(借主)にさせることを約束し、賃借人(借主)がこれに対してその賃料を支払うこと、及び引き渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することによって成立する契約をいいます。こむずかしくてよくわかりませんか?
 要するに、アパートのオーナーは「一室貸しますよ」、入居者は「家賃払いますよ。最後は返しますよ」と約束することです。そこで賃貸借についての話。

貸主と借主の関係は

 2020年4月に改正民法が施行されました。賃貸借との関係で改正された代表例としては「敷金」があります。驚くことに、改正前の民法は敷金についての規定がありませんでした。

 敷金とは、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人(借主)の賃貸人(貸主)に対する金銭の給付を担保する目的で、借主が貸主に交付する金銭をいいます。やはり、こむずかしくてよくわかりませんか?
 要するに、万が一家賃の支払いがなかった場合等に、その支払いに充てるために、貸主がお金を預かることです。だから、敷金は家賃の〇か月分という決め方が多いのです。

敷金はいつ返ってくる?

 敷金は賃料の不払い等に備えて貸主が念のため預かるお金ですから、賃料を真面目に払った借主は最終的には返してもらえるはずです。その返還時期は、賃貸借契約が終了し、かつ明渡しが終わった後とされています。なぜなら、敷金を預かる理由は、賃料不払いに備える以外に、借主の不手際で物件が破損している場合の修理費用や、明渡しが遅れた場合の損害金に充てられる可能性もあるからです。

 貸主であるオーナーとしては、賃料の不払いなく契約が終了したからといって敷金を借主に返還してしまっては、修繕費用や損害金を回収できなくなる可能性が高くなります。

オーナーが変わったら

 では、オーナーが変わってしまった場合はどうでしょうか。前のオーナーに支払った敷金は、新しいオーナーには返してくれとは言えないのでしょうか。

 もちろん、そんなことはありません。ちゃんと敷金を返す義務は新オーナーに引き継がれます。新オーナーは、賃貸物件を購入するにあたって敷金を返す義務があることを前提として購入しているはずだからです。

敷引特約とは

 敷金に関して、西日本の慣習で「敷引特約」というものがあります。敷引特約とは、敷金の返還をするとき、貸主に預けた敷金から一定額を差し引くことを借主があらかじめ約束することをいいます。

 「そんなあほな!」と思う方もいるかもしれません。初めから全額返ってこないことが確定しているのであれば、それはもはや敷金とは呼ばないのではないかという疑問も生じます。しかし裁判所では、敷引特約について、金額が高すぎる場合には無効とする余地を残していますが、一律に無効とはしていません。

 したがってアパート等を借りるときは、入居したい物件が敷引特約がある場合、敷引特約が付いていても魅力的な物件(賃料・間取り・立地等)かどうかを吟味する必要があります。