リーガルボイス-7警察に逮捕されたとき

警察に逮捕されたとき

弁護士の出番!?

 あなたの家族や友人が警察に逮捕される、そのような事態がある日突然やってきたとしたら…。「仕事はどうなる?」「音信不通だった家族の消息が皮肉にも逮捕という形で分かった」等々、突然の逮捕は、捕まった本人はもちろん、周囲の人間の生活を一変させることがあります。

 皆さんは「警察に捕まったら、弁護士の出番!」と考えていませんか。弁護士が法廷で声高らかに「異議あり!」と検察官とやり合っている姿をイメージするかもしれません。しかし、刑事事件において弁護士が、どの段階で出てきて、どのような役割を担うのか、その全体像をイメージすることはむずかしいと思います。

国選弁護人? それとも私選弁護人?

 刑事事件は、時系列順に追っていくと、
①検察官が被疑者を起訴するかどうかを判断するため捜査をしている「捜査段階」
②裁判官が起訴された被告人について有罪・無罪および量刑を判断する「公判段階」
の2つに分かれます。
 殺人罪のような重大犯罪で無罪を主張する事件であれば②公判段階が重要であることはいうまでもありません。しかし、私が強調したいのは ①捜査段階の弁護人の役割の重要性です。

 皆さんは、国選弁護人・私選弁護人という言葉を聞いたことがあると思います。国選弁護人といえば、ひと昔前は②公判段階でしかつくことはありませんでしたが、現在は「被疑者国選」といって①捜査段階からつくようになりました(一部の罪名に限定されますが)。

 ところで「国選弁護人は国の税金で雇われる、報酬の安い弁護士だから、真面目にやってくれない」というイメージを持たれているでしょうか。報酬が安いかどうかは別として「真面目にやってくれない」というのは、都市伝説であってほしいものです。ただし、国選弁護人と私選弁護人を比較した場合、私選弁護人には明確なメリットがあります。

私選弁護人を選任するメリット

 第1のメリットは「自分で選べる」ことです。
 国選弁護人は文字通り国が選ぶ(正確には裁判所が選ぶ)ので、被疑者に選択の自由はありません。

 第2は「逮捕段階から対応可能」なことです。
 国選弁護人は勾留された後(逮捕されて2~3日経過した段階)でないと選任されません。被疑者が逮捕されてから起訴されるまでの最長の身柄拘束期間は原則として23日なので、公判に備えての2~3日の出遅れは痛いですね。しかし、私選弁護人は逮捕されたその日から選任できます。

 第3は「複数の弁護士で対応が可能」なことです。
 被疑者段階の国選弁護人は原則として1人の弁護士で対応するので、多忙を理由に接見になかなか来られない弁護士も少なくありません。しかし、私選弁護人であれば、複数の弁護士で対応できるので、誰も接見に来られないということはまずありません。

 このように私選弁護人のメリットを紹介したのは、刑事弁護では①捜査段階がかなり重要だからです。弁護士は身柄拘束期間に被疑者及びその家族・友人、検察官、被害者と密にコミュニケーションをとる必要があります。被疑者が起訴されることなく早期に身柄を解放されるかは、弁護人の活動に依ることが多々あります。弁護人の地道な活動が功を奏する場面が多いのです。

 大事なことは①捜査段階での弁護人の役割の重要性を、そして私選弁護人を選任することのメリットを知っておくことです。家族や友人が警察に逮捕されたときは、すみやかに弁護士に相談することをお勧めします。

●業務分野のページ(その他の欄)に解決事例を掲載しているのでご覧ください。