リーガルボイス-15 解雇といわれたら

解雇といわれたら

クビ !?

 新型コロナウィルスの流行により、雇用状況が悪化し、社会情勢が大きく様変わりしています。事業者も、従業員の勤務体制の大幅な修正を余儀なくされています。こうしたなか、事業者による解雇、いわゆるクビ宣告が横行しているかもしれません。

 「解雇」とは「使用者がその一方的な意思表示によって労働契約を解約すること」をいいます。わかりにくい言いまわしですが、要するに、労働者の意向と関係なしに「もう来なくていいです」と使用者が労働者に対して一方的に宣言して、労働契約を解消することです。そこで今回は、解雇についてのお話です。

解雇もいろいろ

 解雇には、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇等、様々な種類があり、それぞれ法律等によって解雇が有効と認められるためのハードルが設定されています。現在の社会情勢で関係がありそうなのは、そのうちの「整理解雇」です。

整理解雇とは

 整理解雇とは「使用者が経営不振等の経営上の理由により人員削減の手段として行う解雇」のことをいいます。労働者は悪くないけど、会社の業績が悪いから「クビ!」というパターンです。もちろん、労働者は悪くないので整理解雇は簡単には認められません。
 では、どんな場合は認められないか。次の4要素で判断されます。

①人員を減らす必要があるか
 いくら会社の業績が悪いからといって、会社に充分な預貯金がある場合や業績の回復の見込みがある場合などは、従業員をクビにする必要までに至りません。ボーナスの減額や不支給は仕方ないにしても、クビはやりすぎです。したがって、会社の業績が悪化したということのみで整理解雇をすることはできません。

②解雇を回避する努力をしているか
 ①人員を減らす必要があったとしても、新規採用を控えたり、従業員を出向させたり して、人件費を抑える方法はほかにもあります。会社がそのような工夫をしてもなお、解雇しないと人件費をおさえる方法がないという場合でない限り、整理解雇をすることはできません。

③(解雇の対象となる)人選が合理的であるか
 ②解雇を回避する努力をしていても「誰」をクビにするかについて合理的でなければなりません。解雇と決めた基準は何か、具体的に誰を選ぶか、それぞれに合理性が必要です。何をもって合理的かは、会社によって千差万別ですが、会社に残ってもらえないと困る人や、クビになると生活が困る人は、解雇の対象から外される傾向にあります。

④手続が妥当であるか
 これは難しいので省略します。

整理解雇を回避するには

 労働者の立場で、整理解雇に対処するにはどうしたらよいでしょうか。残念ながら解雇は、使用者から一方的になされるものですから、整理解雇も解雇である以上、労働者の立場で回避することはむずかしいです。もっとも、会社が倒産・廃業・事業の大幅縮小をする場合でない限り、会社から事前に退職の打診がある例も多いようです。
 そこで万が一、会社から業績悪化等を理由に退職の打診があった場合に備えて、ささやかな抵抗手段を読者にお教えします。

 先ほど紹介した整理解雇の4要素に従って、
①「人員削減をしなきゃいけないぐらい会社の業績が悪いんですか?」
②「異動とか出向じゃなくて、いきなりクビですか? そもそも今年も新入社員がたくさん入ったじゃないですか?」
③「なぜ私なんですか? 養わなきゃいけない家族がいるんです! 私が辞めたら会社も困るでしょう」
 と反論してみましょう。人事担当者が判断に迷っている場合、よい結果に繋がるかもしれません。